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ビールについて学ぼう:第三回 ~麦、麦芽と焙煎について~

さて、第三回はビールを最もビールたらしめる原料の麦についてです。

「麦」はイネ科の植物で、大麦や小麦、ライ麦、エン麦などの種類があります。その中でビールの原料に使われるのは大麦がほとんどです。

大麦にも種類があって、穀粒が2列に並んでいる二条大麦と6列に並んでいる六条大麦です。ビールには六条大麦より一粒が大きい二条大麦が使われることが多いですが、六条大麦を使う場合もあるようです。大麦の他にはドイツのヴァイツェンやベルギーのホワイトビールのように小麦を使うものもあります。

この大麦、そのままではビールの原料としては使えず、麦芽化します。なぜ麦芽にするのでしょうか。

大麦の粒はデンプンやタンパク質が蓄えられている胚乳と、発芽して成長する部分である胚とにわけられます。この大麦からアルコールを生成する酵母は、デンプンのままでは分子量が大きすぎてアルコールに分解できませんが、小さくなった糖であれば食べることができ、アルコールを生成できます。なので、酵母が食べられることができる糖までデンプンを分解する必要があるんですね。このデンプンを糖に分解するのが酵素であるアミラーゼです。

また胚乳にはタンパク質がありますがこれもアミノ酸まで分解してあげると、発酵工程で酵母が増殖、発酵という仕事をするのに役立ちます。このタンパク質をアミノ酸に分解するのがプロテアーゼです。

これら2つの酵素、アミラーゼとプロテアーゼを大麦中に生成させるために必要な過程、これが麦芽化です。つまり大麦が発芽することによってこれらの酵素が生成されるんですね。

ちなみに日本酒の場合は麹菌が米のデンプンを糖に分解し、ワインの場合はもともとぶどうに糖が含まれています。

さて少しだけビール製造の話に入ってしまいますが、発芽した麦の成長を止めるために「焙燥」します。この焙燥の目的は麦の成長を止める以外に長期間の保存を可能にすること、ビール特有の色や香りを作ることがあります。焙燥することで成長は止まりますが、デンプンやタンパク質を分解する酵素は高温で失活してしまうので、低温(約50℃)からゆっくりと乾燥させ、80℃を超えたところで焙煎を止めます。これが日本だけでなく、世界を見ても最も多く飲まれているビルスナーに使われるピルスナーモルトになり、酵素力が非常に高い淡色のモルトです。焙燥の温度が上がるのに伴って、ペールエールモルト、ウィーンモルト、ミュンヘンモルトと呼ばれ、それに従って酵素力も下がっていきますが、麦芽風味は増していきます。

焙燥の後は伸びた根を取り除きますが、さらに濃い色のビールを作る場合は焙煎(または焙焦)して麦芽により強い香ばしい風味や焦げた色をつけます。この時の温度を変えることでカラメルモルトやクリスタルモルト、チョコレートモルト、ブラックモルトなどになります。高温になればなるほど酵素力は当然失われていきます。

少し製造工程の話になってしまいましたが、ビールの色と香ばしさ、風味は麦芽の要素が非常に大きいですが、それは焙燥や焙煎の工程によるところが大きいため、少し触れてみました。工程の話をする時にはもう少し詳しく触れてみます。

次回は人気のIPAを語るには欠かすことの出来ないホップについてです。ここでも少し製造工程の話が入ってしまいそうです。

「ビールについて学ぼう」シリーズ

注)店主の知識をまとめたものであり、事実と異なる記述もあるかもしれませんので、その点についてはご容赦下さい。また、この記事で紹介した写真はフリー素材として提供されているものを使用しています。

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