ビールについて学ぼう:第四回 ~ホップがなければビールじゃないのはなぜ?~

November 6, 2017

ビールにはホップが使われていることは、かなり多くの皆さんがご存知だと思いますが、今回はそのホップについてお話します。

 

ホップはアサ科カラハナソウ属のつる性の多年生植物で、成長すると10mにもなるそうです。

 

 

ホップは雄株と雌株があり、ビールの原料となる「球果」と呼ばれる松かさのような房をつけるのは雌株です。この「球果」は「球花」「毬果」「毬花」などとも呼ばれます。ビールの醸造ではこの未受精の球果を使います。

 

 

この球果には「ルプリン」という黄色い粒があり、ルプリンに含まれる樹脂や精油がビール特有の苦味や香りのもととなっています。でも、ホップの役割はそれだけではないので、少し整理してみたいと思います。

 

まず、苦味。これにはホップに含まれるアルファ酸が重要です。アルファ酸はホップが投入される煮沸工程(詳しいことは第十二回で)で熱がかかることによってイソアルファ酸に変化します。アルファ酸のままでは水に溶けないためほとんど苦味を感じませんが、イソアルファ酸に変化することで水溶性となりビール特有の苦味を呈するようになります。

 

このイソアルファ酸は麦芽に含まれるタンパク質と共に、ビールに欠かせない泡を形成し、泡持ちも良くする効果があります。ですのでIPAのようなホップを多く使っているビールは泡立ちも良く、しっかりとした泡が長く残ります。

 

また、ホップにはポリフェノールも含まれており、大麦由来のタンパク質と結合して沈殿するので、ビールを澄んだきれいな色にする働き(清澄化)にも一役を担っています。ビールが濁ってしまうほどの過剰なタンパク質を取り除くのに、ホップのポリフェノールが役に立っています。

 

そしてお客様に「IPAって何の略?」という質問があった時にいつもお話しているホップのもう一つの役割が防腐効果です。これは第二回のグルートのところでも少し触れました。(ビールの香りづけや腐敗を抑えるために古くから色々な薬草が使われ、それらの薬草を配合されたものはグルートと呼び、その当時はホップもその中のひとつだった。)

 

これらの他にもホップには、食欲増進、睡眠や鎮静、利尿作用、消化促進など色々な効果があります。ビールを飲むとトイレに行く回数が増えるのはホップの影響もあるかもしれませんね。また「ちょっと今日は食欲がないな」というときにはホップの効いたIPAを食前酒に飲むと美味しくご飯が食べられるかも。実は店主もちょっと夏バテ気味で食欲が無い時などはIPAで乗り切っています。これ、ホントに効きますよ。

 

では、ホップをビールに使用する目的はこれだけでしょうか。いえいえ、もう一つとても大事な目的があります。それは香りづけです。

 

ホップは「ビタリングホップ」「アロマホップ」に分けられることがあります。ビタリングホップは苦味の含量が多いタイプのホップで、つまりはアルファ酸の含有量が多いということになります。アロマホップは香りの強いタイプのホップで、ルプリンに含まれる精油分が香りの元(揮発成分)になります。それぞれの代表的な品種を紹介すると、

 

ビタリングホップ:マグナム、ヘラクレス、コロンバス、ナゲットなど
アロマホップ:ザーツ、テトナング、カスケードなど

 

ホップの品種はとても多く、100種類以上が世界中で栽培されています。主な生産国はドイツとアメリカですが、その他にもチェコやイギリス、スロベニア、オーストラリア、ニュージーランドなどの国々で栽培されています。もちろんベルギーでも栽培されており、有名なのはポペリンヘ地方。ポペリンフス・ホメルビール(ポペリンヘのホップビールの意味)が造られているファン・エーケ醸造所がその近くにあり、このビールにはポペリンヘのホップが100%使われています。

 

これだけたくさんのホップは品種改良などを経て開発されてきましたが、今ではビタリングホップ=アルファ酸が多い、アロマホップ=揮発成分が多い、という分類が崩れてきているようです。

 

例えばシトラスなフレーバーをつけてくれ、今年から定番になるデュベル・トリプルホップの三番目のホップであるシトラは香りも強いですがアルファ酸の含有量も多い。ですのでビタリングホップとアロマホップの両方を兼ね備えたホップと言えます。

 

また香りは精油分、つまり揮発成分なので、通常ホップが投入される煮沸工程では熱によって揮発成分が飛んでしまいます。ですので、ホップのタイプも重要ですが、製造工程のどの段階でホップを投入するのかによっても大きく影響することになり、ビタリングホップ、アロマホップの分類はあまり意味が無いのかもしれません。

 

ここまでの話でホップがビールに与える影響、特に味わいや風味、香りへの影響がどれだけ大きいかがお分かりいただけたと思います。これだけ品種も多く、製造工程での使い方によっても味わいが変わってしまうホップを使いこなしておられるブルワーさん達は本当に凄いなと、ビールを飲むたびに頭の下がる思いをしている店主です。

 

さて、ホップがなければビールじゃない理由はお分かりいただけたと思いますが、次回はビール造りに欠かすことの出来ない酵母のお話です。

 


「ビールについて学ぼう」シリーズ
第一回 ~そもそもビールって?~
第二回 ~基本の原料とドイツのビール純粋令、そして日本~
第三回 ~麦、麦芽と焙煎について~
第四回 ~ホップがなければビールじゃないのはなぜ?~
第五回 ~酵母の力は偉大だ!~
第六回 ~水が違えばビールも変わる?~
第七回 ~いろんな副原料~
第八回 ~ビール製造の基本~
第九回 ~麦を麦芽に:製麦工程~
第十回 ~デンプンを糖分に:糖化工程~
第十一回 ~麦汁をきれいに:濾過工程~
第十二回 ~ホップの登場:煮沸工程~
第十三回 ~いよいよお酒に:発酵工程~
第十四回 ~まだ飲んじゃだめ:貯酒・熟成工程~
第十五回 ~Are you ready?:パッケージング工程~
第十六回 ~おまけ~

 

注)店主の知識をまとめたものであり、事実と異なる記述もあるかもしれませんので、その点についてはご容赦下さい。また、この記事で紹介した写真はフリー素材として提供されているものを使用しています。
 

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