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ビールについて学ぼう:第五回 ~酵母の力は偉大だ!~

November 14, 2017

「酵母なんて初めて聞いた」というかたはそれほど多くないかもしれません。自分でパン作りをされる方はパン酵母をつかうので、馴染みがあるかもしれません。でも実際のところ酵母がどんな仕事をしているのかまでを知っているかたはまだまだ少ないように思います。

 

酵母とはいわゆる微生物。難しく言うと単細胞の真菌類で、多くの酵母は子嚢菌門に属していますが、担子菌門に属しているものも僅かにあります。英語では”yeast”(イースト)と言います。「ドライイースト」とか「イースト菌」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これらは全部酵母です。この酵母は顕微鏡で見ると円形や楕円形をしていて、運動性はありません。

 

ではその酵母はどんな仕事をしているのでしょうか? 

 

『酵母は糖類を食べて生きている』という言い方をしたりしますが、この『食べて生きる』とは『酵母は自らが持つ酵素によって糖類を分解し、生きていくのに必要なエネルギーを作り出して生きている』ということなんです。つまり人間が食べ物を食べて、体内で分解して生きていくのに必要な栄養にしているのと同じですね。ちなみに人間が体内で食べ物を分解しているのも酵素の働きによるものです。

 

ではビール造りではどんな働きをしているのでしょう。そのためには少しだけ麦の話に戻ります。

 

第三回の『麦、麦芽と焙煎について』で「酵母はデンプンのままでは分子量が大きすぎてアルコールに分解出来ないが、小さくなった糖であればそれからアルコールを生成でき、デンプンを糖に分解するのが酵素であるアミラーゼである」と話しました。また「アミラーゼは麦を麦芽化することによって生成される」ことも話しました。ここで『麦の麦芽化』が酵母の仕事とつながりました。

 

さて、このアミラーゼ。これはデンプンを麦芽糖にまで分解します。これはブドウ糖が2つつながったものです。しかし酵母はまだ麦芽糖のままではアルコールに出来ず、ブドウ糖にまで分解しなくてはいけません。これを行うのがマルターゼという酵素。これは酵母が持っている酵素です。つまり、麦芽が持つアミラーゼがデンプンを麦芽糖に分解し、酵素が持つマルターゼが麦芽糖をブドウ糖に分解し、アルコールを作る準備が整うわけです。

 

そして最後はブドウ糖を分解します。これは酵素を使わない酵母によるエネルギー代謝のプロセスです。これによってブドウ糖はアルコール(エタノール)と炭酸ガスに分解されます。これでようやく麦がお酒になりました。

 

デンプンがアルコールにまで分解されるプロセスを図にしてみました。

 

 

これを見ると、ブドウ糖が2つつながって麦芽糖になっており、麦芽糖(あるいはブドウ糖)がたくさんつながってデンプンになっていることがお分かりいただけると思います。ちなみにブドウ糖のC6H12O6の炭素、水素、酸素のそれぞれの数と、アルコールC2H5OH、炭酸ガスCO2がそれぞれ2個ずつ出来た時の数が等しくなっていますね。(C2H5OH x 2=Cが4個、Hが12個、Oが2個、CO2 x 2=Cが2個、Oが4個、合計でCが6個、Hが12個、Oが6個でブドウ糖のC6H12O6と同じ。)

 

ここまで酵母がアルコールを作るプロセスの話で長くなってしまいましたが、ここからはビールにおける酵母による発酵の話に入ります。

 

ビールの発酵には大きく上面発酵と下面発酵の2種類があることをご存知の方もおられると思います。この上面発酵をする酵母を『上面発酵酵母』または『エール酵母』、下面発酵をする酵母を『下面発酵酵母』または『ラガー酵母』と言います。そう『キリンラガー』でおなじみのラガーとはそういう意味だったのです。

 

上面発酵酵母(エール酵母)はサッカロマイセス属セレビシエ種で16~24℃ぐらいの温度で活動し、発酵期間は短くだいたい3~6日ぐらい。酵母は自分が作りだした炭酸ガスによって発酵液の上の方に浮いてくるので上面発酵と呼ばれています。この上面発酵酵母による発酵の特徴としては副産物が多く、フルーティーな香りやエステル香と呼ばれる香り(バナナに似た香り)がついたりして、全体に奥行きのある味わいのものが出来ます。

 

一方、下面発酵酵母(ラガー酵母)はサッカロマイセス属ウバルム種で4~10℃くらいの温度帯で活動します。発酵期間は長めで6~10日ぐらいかかります。この酵母は発酵後期になると集合して凝集し、発酵液の下の方に沈殿するため下面発酵と呼ばれています。この酵母による発酵の特徴は副産物が少なく、キリッとシャープな味わいのものに仕上がることです。日本の大手メーカーさんのビールはほとんどが下面発酵酵母で造られるラガービールになります。

 

コムシェモアにお越しいただいたお客様で「スーパードライが好きなので、ドライなものが欲しい」とお願いされたりするのですが、コムシェモアに置いているビールは1銘柄を除いてほぼ全て上面発酵(一部、自然発酵やミックスのものもありますが)なので、そのご期待に応えるのが難しいことがお分かりいただけるのではないでしょうか。なんとかその中でもフルーティーでありながら後口がドライなもの(例えばマルール10)をおすすめしたりしますが、是非、上面発酵による複雑な味わいにも挑戦して頂ければ、店主としても非常に嬉しい限りです。

 

ところで、サラッと『自然発酵』という言葉が出てきたことにお気づきでしょうか。実はビールの発酵の種類を大別すると、『下面発酵』『上面発酵』『自然発酵』の3つになります。そしてこの『自然発酵』によって造られるビールはベルギーにしかありません。そう、ランビックです。

 

ランビックはベルギーの特定の地域、ブリュッセルの南西から西部にかけてのセンヌ川流域からパヨッテンラントに渡る地域で生産されています。その発酵工程は独特で、麦汁を屋根裏に設置された蓋がない広くて浅い容器に入れて冷却し、その時に野生酵母(ブレタノマイセス属)を麦汁に取り込みます。通常の場合は他の菌や酵母が入ってしまうこと(コンタミネーション)を防ぐため厳しく管理されている発酵工程が、ランビックでは開放された状態で行われるという、非常に特殊な方法で発酵が行われます。このようなランビックの醸造所では、屋根裏の窓や通風口を開けたままにし、掃除や改装なども行いません。こうすることで、その環境下で優勢である野生酵母が生きつづけることが出来るという、逆転の管理方法を採っているわけですね。

 

あの強い酸味と独特な香りを持つランビックはこのようにして造られています。

 

このように『自然発酵』を含め、ビールには大きく分けて3種類の発酵方法があります。

 

今回のテーマは酵母でしたが、その酵母が行う発酵の基本的なことから、ビールの3種類の発酵についてお話しました。発酵工程の話にも入ってしまい少し長くなりましたが、酵母がどれだけ大事な仕事をしてくれているかがおわかりいただければ嬉しいです。

 

次回のテーマは『水』。普段何気なく飲んでいる水がビールに与える影響とはどういうものなのでしょうか?

 


「ビールについて学ぼう」シリーズ
第一回 ~そもそもビールって?~
第二回 ~基本の原料とドイツのビール純粋令、そして日本~
第三回 ~麦、麦芽と焙煎について~
第四回 ~ホップがなければビールじゃないのはなぜ?~
第五回 ~酵母の力は偉大だ!~
第六回 ~水が違えばビールも変わる?~
第七回 ~いろんな副原料~
第八回 ~ビール製造の基本~
第九回 ~麦を麦芽に:製麦工程~
第十回 ~デンプンを糖分に:糖化工程~
第十一回 ~麦汁をきれいに:濾過工程~
第十二回 ~ホップの登場:煮沸工程~
第十三回 ~いよいよお酒に:発酵工程~
第十四回 ~まだ飲んじゃだめ:貯酒・熟成工程~
第十五回 ~Are you ready?:パッケージング工程~
第十六回 ~おまけ~

 

注)店主の知識をまとめたものであり、事実と異なる記述もあるかもしれませんので、その点についてはご容赦下さい。
 

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