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ビールについて学ぼう:第六回 ~水が違えばビールも変わる?~

November 19, 2017

ビールの主原料の話を麦、ホップ、酵母と進めてきましたが、最後の一つである水の話をしてみます。

 

 

最後の主原料である水ですが、ビールにとってどれぐらい重要なのでしょうか?

 

「主原料と言ってももともと味のない水だし、やっぱり麦とかホップとかが大事なんでしょ?」

 

もちろん麦、ホップ、そして発酵の仕事をする酵母が重要なのはその通りですが、「ビールに占める水の割合は90%以上」と言われると、これは無視できなさそうですね。では、ビールに影響を与える水の違いってどういうものでしょう?

 

『硬水』『軟水』という言葉をお聞きになった方は多いと思います。これは水の『硬度』によって分けられますが、この硬度は水に含まれるカルシウムやマグネシウムの量によって決まります。WHO(世界保健機構)の基準では硬度120mg/l以下を『軟水』、120mg/l以上を『硬水』としています。日本では主に軟水、ヨーロッパなどでは硬水が多いです。軟水になるか硬水になるかは地層中のミネラルをどれだけ水の中に取り込むかによって変わるのですが、日本の場合は地層に滞留している時間が短いため軟水になることが多く、ヨーロッパのような広い大地のところでは、地層に滞留する時間が長くなるため硬水になることが多いようです。このあたりの詳しい話はインターネットでたくさん見ることが出来るので、ここでは詳しい話はしませんが、ミネラル成分が多いと硬水で、少ないと軟水ということですね。

 

この水の硬度がビールにどのような影響を与えるのか。それを知るためにはピルスナーの話がわかりやすいです。

 

ピルスナーはチェコのピルゼン市が発祥です。ピルゼンがピルスナーの語源となっているわけですが、そのピルゼン市は1842年にビールの品質を良くするために、ドイツのミュンヘンからビール醸造の技術者、ヨーゼフ・グロルを招きました。ミュンヘンのビールは独特の濃い色をしていて、ピルゼンの人達も当然、濃い色のビールが出来ると考えていました。しかし実際に出来上がったビールは黄金色の、皆さんが普段目にすることが多い大手メーカーさんのビールと同じような色をしていました。

 

なぜそのようなことになったのか。それは水の硬度の違いから来るものでした。

 

ミュンヘンの水は硬度が高く硬水であったのに対し、ピルゼンの水は軟水だったのです。硬水であるミュンヘンの水は、麦芽の穀皮からタンニンなどを多く溶け出させたり、麦汁の煮沸工程でもアミノ酸と糖の化学反応を促進して麦汁の色を濃くします。これに対し、軟水であるピルゼンの水はミュンヘンの硬水のような影響が小さく、そのため、ピルゼンで造られたビールは色が淡く、スッキリとした味わいのものになったのです。

 

いずれも下面発酵の酵母を使ったラガービールでありながら、色合いや味わいの違いを生み出したのが、水の違いによるものであるということがわかる、非常に有名な例です。

 

ちなみにこのピルゼンで出来上がった新しいビールは、そのスッキリとした味わいから多くの人に受け入れられ、また同じ時期に起こった『近代ビールの三大発明』と言われる1873年のドイツのカール・フォン・リンデによる『アンモニア冷凍機』、1876年のパスツールによる『低温殺菌法』、1883年のデンマークのカールスバーグ研究所のエミール・クリスチャン・ハンゼンによる『酵母純粋培養法』などと重なり、世界中に広まったと言われています。特にパスツールによる低温殺菌法の発明によって、それまで『ビールは醸造所の煙突が見えるところで飲め』(ドイツ)と言われていたように、醸造所の近くでしか品質が担保できなかったものが、ビールの保存期間や輸送範囲が大幅に拡大することになりました。

 

すこし水の話から逸れてしまいましたが、このように、水の性質、特に硬度によってビールの色や味わいに違いが生まれることがお分かりいただけたと思います。従って、それぞれの醸造所は作りたいビールに最も適した水を作ることも重要な仕事の一つとなっています。

 

これでビール醸造に必要な原料である麦、ホップ、酵母、水の話は終わりました。次回はここから更にビールの味わいの幅を広げる役目を担っている副原料についてお話したいと思います。

 


「ビールについて学ぼう」シリーズ
第一回 ~そもそもビールって?~
第二回 ~基本の原料とドイツのビール純粋令、そして日本~
第三回 ~麦、麦芽と焙煎について~
第四回 ~ホップがなければビールじゃないのはなぜ?~
第五回 ~酵母の力は偉大だ!~
第六回 ~水が違えばビールも変わる?~
第七回 ~いろんな副原料~
第八回 ~ビール製造の基本~
第九回 ~麦を麦芽に:製麦工程~
第十回 ~デンプンを糖分に:糖化工程~
第十一回 ~麦汁をきれいに:濾過工程~
第十二回 ~ホップの登場:煮沸工程~
第十三回 ~いよいよお酒に:発酵工程~
第十四回 ~まだ飲んじゃだめ:貯酒・熟成工程~
第十五回 ~Are you ready?:パッケージング工程~
第十六回 ~おまけ~

 

注)店主の知識をまとめたものであり、事実と異なる記述もあるかもしれませんので、その点についてはご容赦下さい。また、この記事で紹介した写真はフリー素材として提供されているものを使用しています。
 

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