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ビールについて学ぼう:第七回 ~いろんな副原料~

November 26, 2017

前回まででビールの主原料である麦、ホップ、水、そして酵母の話をしてきました。でもビールにはそれ以外にも様々な原料が使われています。ただしそれらはビール醸造に必要不可欠なものではないので、副原料として捉えます。

 

この副原料の存在は、ベルギービールにとっては非常に大きなものです。そのお話をするにはまずドイツのビールについてお話したほうが良さそうです。

 

第二回でドイツのビールに関する法律である『ビール純粋令』に触れました。ここで簡単におさらいしておきます。

 

ビール純粋令は1516年にウィルヘルム4世によって制定された法律で、食品の品質を保証する世界最古の法律と言われているものですが、ここでは「ビールは大麦、ホップ、水のみから造らなければいけない」と定められています。つまり今回お話しようとしている副原料を「使ってはいけないよ」という法律なんですね。ドイツビールにも多くのタイプがあり、それぞれ異なる味わいのビールですが、このように「麦、ホップ、水のみ」から造られているドイツビールにあれ程の味の違いがあるというのは、ドイツのビール醸造技術の素晴らしさを物語っています。

 

さて、一方のベルギービール。こちらはそういう法律もなく、本当に自由に副原料を活用しています。

 

例えば暑い時期に飲むビールとして、さっぱりとした味わいで人気のホワイトビール。これは大麦と共に小麦を使ったビールです。小麦由来のタンパク質などによって白く霞がかかったように見えるためホワイトビールと呼ばれますが、実はドイツにもベルリナー・ヴァイセやヴァイツェンといった小麦を使ったホワイトビールがあります。しかしベルギーのホワイトビールはドイツのものと違い、オレンジピールやコリアンダーの副原料を使用していることが多いです。そのため、通常の小麦をつかったホワイトビールと区別するためベルジャンホワイトと呼ばれたることもあります。コムシェモアでもそのように呼んでいます。

 

このようにベルジャンホワイトは副原料を使って、ベルギーのホワイトビールの特徴をだしている好例です。

 

この他にもよく知られているものはフルーツを使ったビールでしょう。例えばフルーツランビック。ランビックは野生酵母で自然発酵させた強い酸味が特徴のビールですが、これに甘いフルーツを使うことで、酸味がまろやかになり、甘酸っぱいさわやかなフルーツジュースのような味わいになります。使うフルーツによって味わいも大きく変わりますので、いろんなフルーツを使ったフルーツランビックを飲み比べるのも非常に楽しいです。ブーン醸造所の『ブーン・フランボワーズ』は木苺を使ったものですが、フルーツビールの女王と呼ばれている素晴らしいビールです。

 

他にもハーブやスパイスを使ったり、中には緑茶を使ったりしたビールもありました。ベルギーでは本当に自由な発想で、様々な副原料を使っていろんな味わいのビールを作る、素晴らしい国だと思います。その味わいの振れ幅の大きさに惚れ込んで、もっとたくさんの人にベルギービールの奥深さを知ってもらいたい、と考えコムシェモアを始めた店主です。

 

 

さて、これを読まれた方の中には「じゃあ副原料を使わずにいろんな味わいのビールを造っているドイツのほうが、混ぜもので味に変化をつけているベルギーより凄いんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃるでしょうし、そのような捉え方があってもいいと思います。ただ、ベルギーにも例えばレッドビールのように副原料なしでワインのような味わいの、誰が飲んでも「えっ、これがビール?」と思わず言ってしまうようなビールも造られていますので、その醸造技術の高さはドイツに引けをとらないと思っています。

 

このように副原料もうまく使うことで、様々な味わいのビールを作ることが出来るわけですが、ここでやはり日本のことに触れておく必要があるでしょう。

 

これも第二回で話しましたが、日本でも酒税法によってビールに使うことができる原料は決まっています。それ以外のものを使うと、たとえ麦芽の比率が高くてもビールと呼ぶことが出来ず発泡酒となってしまいます(なのに酒税はビールと同じですが)。

 

この酒税法で認められている、ビールと呼ぶことができる使ってもいい原料は、

 

麦芽、ホップ、米、麦、とうもろこし、こうりゃん、ばれいしょ、デンプン、糖類または財務省令で定める苦味料もしくは着色料

 

です。

 

最近、ハロウィンの季節に見ることが増えたパンプキンビール。これってかぼちゃを使っているので、酒税法上ビールと呼ぶことはできません。でも、なぜかぼちゃがだめで、じゃがいもはいいんでしょう? カラメルは着色料としてOKですが、チョコレートはだめ。もちろんフルーツやスパイスを使うと発泡酒です。

 

世界的に見ても、歴史的に見ても、ビールには様々な副原料が使われているのに、日本では酒税法という法律で縛ってしまうことの意味はどこまであるのか。そういった声や現実を見て、ようやく酒税法のこの部分が改正される方向になりました。

 

現在は麦芽使用67%以上でなければいけないものが、改正後は50%以上となり、その他の原料の使用量が増やせるようになります。また、副原料についても先に挙げた原料しか認められなかったものが、副原料として風味付けなどのために果実・果汁や香辛料も使用できるようになるとのことです。こうなると今は『発泡酒』であるベルジャンホワイトも改正後には『ビール』ということになります。この改正は2018年に実施される予定です。もうすぐですね。

 

この改正によって、ベルギービールだけでなく、日本のクラフトビールメーカーさんもより自由に新しいビールを作ることができるようになるでしょう。というのも、第二回で触れましたが、大手メーカーさんが作る『発泡酒』は麦芽の比率を下げて酒税を低くすることで販売価格を下げているわけですが、そのため『発泡酒』はビールより劣っているというイメージが定着しています。実際、麦芽比率が下がれば、その分、ビール本来の味わいも得にくくなります。一方、クラフトビールメーカーさんが麦芽比率の高い、ビールらしい味わいを持った素晴らしいビールを作っても、認められていない副原料を使うことで発泡酒になってしまう。でも麦芽比率が50%以上あれば、ビールと同じ酒税がかかってしまいます。

 

つまり『発泡酒=安い』と『発泡酒=美味しくない』というイメージが定着してしまっているために、いくら美味しいビールを作っても『発泡酒』なのにビールと同じ税金がかけられ(=安くない)、『発泡酒』だから美味しくないんじゃない?、と誤解され、そうなると作っても売れないから、諦める。でも酒税法が改正されれば、きっと日本のクラフトビールにもこれまで以上に大きな可能性が広がるでしょう。

 

最後は少しかたい話になってしまいましたが、副原料を使うことでビールの世界がもっと広がることがお分かりいただけたと思います。その中で「いや、やっぱり副原料を使わないビールこそ本物のビールだ」と考える方もいらっしゃるでしょうし、「そんなにいろんな味わいのビールが出来るなら、混ぜものなんて言わずに、楽しんでみよう」と思われる方もいらっしゃるでしょう。ビールはあくまで嗜好品。ベルギービールが副原料を自由に使っているように、それぞれが思い思いの楽しみ方を自由にすればいい、そんなふうに考えています。

 

さて、第七回までは原料を軸にビールのお話をしてきましたが、次回からはビールはどのように造られるのか、について話していきたいと思います。第八回では『ビール製造の基本』と題してビール製造の全体像について話してみたいと思います。

 


「ビールについて学ぼう」シリーズ
第一回 ~そもそもビールって?~
第二回 ~基本の原料とドイツのビール純粋令、そして日本~
第三回 ~麦、麦芽と焙煎について~
第四回 ~ホップがなければビールじゃないのはなぜ?~
第五回 ~酵母の力は偉大だ!~
第六回 ~水が違えばビールも変わる?~
第七回 ~いろんな副原料~
第八回 ~ビール製造の基本~
第九回 ~麦を麦芽に:製麦工程~
第十回 ~デンプンを糖分に:糖化工程~
第十一回 ~麦汁をきれいに:濾過工程~
第十二回 ~ホップの登場:煮沸工程~
第十三回 ~いよいよお酒に:発酵工程~
第十四回 ~まだ飲んじゃだめ:貯酒・熟成工程~
第十五回 ~Are you ready?:パッケージング工程~
第十六回 ~おまけ~

 

注)店主の知識をまとめたものであり、事実と異なる記述もあるかもしれませんので、その点についてはご容赦下さい。また、この記事で紹介した写真はフリー素材として提供されているものを使用しています。
 

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