ビールについて学ぼう:第十回 ~デンプンを糖分に:仕込工程~

製麦工程を経て麦芽の準備が整いました。しかしアルコールに変えてくれる酵母はデンプンのままでは分解できません。『仕込工程』は麦のデンプンを糖分に分解する工程です。またタンパク質もアミノ酸に分解されます。

仕込工程の大きな流れは、

  1. 麦芽を粉砕

  2. 水と混ぜておかゆ状に(マイシェ)

  3. 撹拌しながら加温して糖化とタンパク質の分解

です。

ではもう少し詳しく見ていきましょう。

麦芽の粉砕 麦芽中のデンプンを糖化する時に、麦芽の粒のままでは効率が悪いのであらかじめ細かく粉砕します。しかし、ただ細かくすればいいだけではないようです。

麦芽には穀皮がついたままです。この穀皮は後の『濾過工程』で濾過材としての役割を担いますが、あまり細かくしすぎるとロイター板(濾過工程のところで説明します)が目詰まりを起こして濾過に時間がかかってしまいます。従って穀皮は細かくしないようにします。その一方、穀粒については細かくしないと糖化の効率が悪くなります。そのため麦芽の粉砕の工程では穀粒は細かく、穀皮は粗くなるように工夫されているそうです。実際にどんなふうにしているのか見てみたいものです。風選でいったん穀粒と穀皮に分けたりするんでしょうか?

マイシェ 細かくなった麦芽のままでは糖化もタンパク質の分解も進みません。糖化槽と呼ばれる仕込の釜の中に粉砕した麦芽と一緒に温水も入れられます。この状態が『マイシェ』と呼ばれるもので、最初はおかゆ状になっていますが、糖化が進むと液状になります。水に溶けないデンプンが糖化され、水に溶けるようになるからですね。

デンプンの糖化 第五回の酵母の話のところでデンプンの分解(糖化)は麦芽由来の酵素(アミラーゼ)によって麦芽糖(ブドウ糖が2つつながった二糖類)になり、酵母が持つ酵素(マルターゼ)によってブドウ糖に分解され、さらに酵母のエネルギー代謝によってアルコールと炭酸ガスになる、という話をしました。仕込工程では麦芽由来のアミラーゼによってデンプンが麦芽糖になるところまでが行われます。

デンプンはブドウ糖が300個から600個くらいつながっているとても大きな分子です。これを酵素が切り離していくのですが、これが2段階で行われます。アミラーゼにはα-アミラーゼとβ-アミラーゼがあるのですが、まずα-アミラーゼが大きめの低分子に切っていきます。α-アミラーゼによってある程度細かくなった低分子を今度はβ-アミラーゼが端からブドウ糖2分子ずつ切っていきます。こうして麦芽糖になります。

タンパク質の分解 タンパク質も同時に分解されアミノ酸になることで酵母の栄養になります。タンパク質を分解するのはプロテアーゼという酵素でこれも麦が麦芽になることで生成されます。また一部、アミノ酸まで分解されずに残るタンパク質やペプチドはビールの特徴である泡を形作る役割を担っています。

マイシェの温度管理 このように仕込工程ではいくつかの酵素によってデンプンやタンパク質の分解が行われますが、それぞれの酵素が働く温度が異なります。そのためマイシェの温度管理が必要になります。ビールによって異なるようですが、基本的には50℃、65℃、75℃と段階的に上げていきます。

50℃の温度は『タンパク休止』と呼ばれ、タンパク質を分解するプロテアーゼを働かせる温度です。ここで酵母の栄養となるアミノ酸や、泡持ちに役立つタンパク質、旨味やコクを与えるペプチドなどが生成されます。

65℃ではβ-アミラーゼが働く温度です。そのためこの温度を『糖化温度』と呼んでいます。それまで長い分子だったものが低分子になるため、ドロドロで濁ったおかゆ状だったマイシェが、サラサラの透明感のある状態に変化します。

75℃はほとんどの酵素を失活させる温度です。仕込工程ではここまで行われます。

温度管理の方法は色々ありますが、大きく分類すると『インフュージョン法』と『デコクション法』になります。インフュージョン法は一つの糖化層の中でマイシェの温度を段階的に上げていく方法で、上面発酵のビールやまろやかな味わいの下面発酵ビールを作る時に行われます。一方のデコクション法はマイシェの一部を別の釜で加熱して温度を上げ、糖化槽に戻して全体の温度を上げて管理する方法で、下面発酵ビールの時に行われる方法です。煮沸して戻すという回数も作るビールによって異なるようです。

このようにしてデンプンが糖になり酵母による発酵が可能になりました。しかし発酵工程に行くには固形物(穀皮や分解された残りカスなど)を取り除く必要があります。それが『濾過工程』です。

「ビールについて学ぼう」シリーズ 第一回 ~そもそもビールって?~ 第二回 ~基本の原料とドイツのビール純粋令、そして日本~ 第三回 ~麦、麦芽と焙煎について~ 第四回 ~ホップがなければビールじゃないのはなぜ?~ 第五回 ~酵母の力は偉大だ!~ 第六回 ~水が違えばビールも変わる?~ 第七回 ~いろんな副原料~ 第八回 ~ビール製造の基本~ 第九回 ~麦を麦芽に:製麦工程~ 第十回 ~デンプンを糖分に:仕込工程~ 第十一回 ~麦汁をきれいに:濾過工程~ 第十二回 ~ホップの登場:煮沸工程~ 第十三回 ~いよいよお酒に:発酵工程~ 第十四回 ~まだ飲んじゃだめ:貯酒・熟成工程~ 第十五回 ~Are you ready?:パッケージング工程~ 第十六回 ~おまけ~

注)店主の知識をまとめたものであり、事実と異なる記述もあるかもしれませんので、その点についてはご容赦下さい。

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