ビールについて学ぼう:第十四回 ~まだ飲んじゃだめ:貯酒・熟成工程~

発酵工程が終わり若ビールが出来上がりました。でもこの状態ではまだ味が荒々しいので、『熟成・貯酒工程』で熟成させるのですが、実はまだ発酵が完全に終わったわけではありません。

一般的に発酵工程で起こる発酵は『主発酵(または前発酵)』と呼ばれ、熟成・貯酒工程で起こる発酵は『後発酵』と呼ばれています。この後発酵は残った糖分によって起こりますが、炭酸ガスが生成されます。この時、加圧状態を保ちながら徐々に冷却することで炭酸ガスがビール中に溶解していきます。こうしてビールになくてはならない爽快な喉ごしを生み出す泡がビールの中に閉じ込められます。

もちろん熟成中で起こるのは後発酵だけではありません。いくつか見ていきましょう。

  • 不快な匂いを取り除く

若ビールには発酵工程で生成される不快な匂いが残っています。例えばダイアセチルという物質があるのですが、これは漬物などで感じるような発酵臭(バタースコッチのような甘い香りと表現されたりもします)で、ビールにとっては好ましくない香りです。これが熟成中に他の物質に変換されます。これも酵母による働き(発酵とは違う)によるものだそうで、そのため主発酵が終わってから温度を下げすぎると酵母の働きが鈍くなり、ダイアセチルが多く残ってしまったりするようです。

  • 仕事を終えた酵母を取り除く

後発酵を行う酵母は主発酵に比べるとかなり少なく、若ビール中に浮遊して後発酵を行っています。一方、主発酵でその仕事を終えた酵母は沈殿しますので、これを取り除きます。

  • ビールの清澄

酵母の他にもタンパク質などの浮遊物がありますが、それらも熟成中に底に沈殿させて取り除きます。こうすることで澄んだ透明感のあるビールを得ることができます。

このようにして若ビールを熟成することで、雑味や不快な匂い、浮遊物などを取り除いて、全体の味わいを整えることができます。一般的にはエールで1ヶ月以上、ラガーで2〜3ヶ月以上、熟成させるそうです。ちなみに『ラガー』とは「貯蔵する」という意味でもともとはドイツで冬にビールを仕込んで洞窟などで低温貯蔵したビールがラガービールでした。

ところで、この「ビールについて学ぼう」を書くきっかけとなったのは『ドライホッピング』を説明するためでした。以前、限定でご提供していた『セゾン デュポン キュベ ドライホッピング 2016』の紹介をした時に、ドライホッピングの説明を簡単にしたのですが、いずれ改めて詳しく説明する、と言ってここまで時間がかかってしまったのでした。

ホップは煮沸工程で投入されるとお話しました。苦味を付与するホップは煮沸工程の初期に投入してしっかり『煮出す』ことで苦味が、香り付けのホップは煮沸工程の後半で投入して香りが熱によって揮散するのを抑える、ということでした。ドライホッピングはこのどちらでもなくて、発酵が終わった後の工程、つまり熟成工程の初期段階で投入されます。熱がかからないので香りも飛ばずに、欲しい香りをしっかりと付けることができます。

煮沸工程で使うホップはもちろん乾燥したホップの球果も使いますが、多く使われているのは粉砕したホップを固めたペレット状のもの。球果のままだと嵩張りますし、保存も難しく、製造工程でもペレットのほうが扱いやすい。ですがドライホッピングでは乾燥した球果をティーバッグのような袋に入れて、ビールに漬け込むことで香り付けを行います。

今では『セゾン デュポン キュベ ドライホッピング』や『デュベル トリプルホップ』、『ルプルス・オペラ』などドライホッピングを行っているビールは色々ありますが、ベルギービールでドライホッピングと言えば『オルヴァル』が最も代表的と言えるでしょう。トラピストの中でもオルヴァル修道院は唯一、一つの銘柄しか造っていません。そのたった一つのビールにこの方法をいち早く取り入れて造り続けている。なんともロマンを感じてしまいますね。こういうことを知って飲めば、ビールの味わい方も変わってくるのではないでしょうか。

さて、ドライホッピングの話が長くなってしまいましたが、こうして熟成・貯酒工程を経たビールはついに私達の手元に届く準備ができました。最後は『パッケージング工程』です。

「ビールについて学ぼう」シリーズ 第一回 ~そもそもビールって?~ 第二回 ~基本の原料とドイツのビール純粋令、そして日本~ 第三回 ~麦、麦芽と焙煎について~ 第四回 ~ホップがなければビールじゃないのはなぜ?~ 第五回 ~酵母の力は偉大だ!~ 第六回 ~水が違えばビールも変わる?~ 第七回 ~いろんな副原料~ 第八回 ~ビール製造の基本~ 第九回 ~麦を麦芽に:製麦工程~ 第十回 ~デンプンを糖分に:仕込工程~ 第十一回 ~麦汁をきれいに:濾過工程~ 第十二回 ~ホップの登場:煮沸工程~ 第十三回 ~いよいよお酒に:発酵工程~ 第十四回 ~まだ飲んじゃだめ:貯酒・熟成工程~ 第十五回 ~Are you ready?:パッケージング工程~ 第十六回 ~おまけ~

注)店主の知識をまとめたものであり、事実と異なる記述もあるかもしれませんので、その点についてはご容赦下さい。

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